奇しくも先輩の命日にご来店

まえみは心の病気と診断されていたらしい。
2年前にこの町に移り住んだ。
外国人と恋におち、ままならぬ不倫に身をこがし憔悴のはてにこの町に移り住んだ。
彼は弁護士。奥様は画家だったらしい。

まえみは源氏物語に登場するような着物の似合いそうな一重まぶた、おちょぼぐち、豊満な胸。とても男性にはつくしそうなタイプの女性だった。

いつも店に入るとやつぎばやに話をはじめ、かかっている有線のなつめろヤングの歌に昔の思い出を這わせては「懐かしい懐かしい」とつぶやいていた。私の話など微塵も耳を貸さなかった。そして歌は特に中森明菜がすきだった。

何回か私の店に訪れた後に、ある日の午後不意にやってきた。
彼女は職場の上司と衝突したらしくかなり疲れていた。上司がみなのいる前で彼女を厳しく叱ったそうだ。勤続18年の彼女を。
そんなことがあり早退したあと入眠剤を飲みそれでも眠れず私のところへきた。
ノースリーブの白とブルーの花柄のワンピースをきていた彼女はやはり憔悴しきっていた。

最近何もいいことがないのという彼女に、私はすごくあることを感じた。
誰かあなたの周りで最近奇妙な亡くなり方した人いる?

今私たちのほかに一人の女のひとがリクライニングの椅子に座っているんだけど。
私にはあの時確かに見えた。ショートカットの目のぱっちりした上品な女の人。そして黄色の洋服を着ていた。

私の問いに彼女はこう答えた。
「実はとても仲のいい先輩が2年前に子宮ガンでなくなりました。」
その彼女の様子をきくとほとんどそれと酷似していた。私は鳥肌がたった。
「彼女はとても私を心配してくれていました。」とまえみはいう。まえみもまた、子宮筋腫を持っている。

その彼女から形見もらった?
「はい、このネックレスと指輪です。」そう指輪どこにあるの?「鏡台です。」

私にはその時その形見がまえみを励ますよりも、「私は死んだのにあなたは生きている。羨ましい」といっているような気がした。

在りし日の彼女に感謝をして、成仏することを願い、その形見は近くの神社にどうすればよいかアドバイスを受けてみてとアドバイスしたのだ。
奉納とかおたき上げすることも必要かも知れない・・・と。

そして彼女は続けて言った。それを聞いてまた私は鳥肌がたった。

「実は今日が彼女の命日だったんです。今気が付きました。」って。

今日眠れる?「はい。大丈夫です。明かりをたくさんつけて寝ます。」
彼女は帰った。

帰ったあとの私のからだは鉛をつけたかのように重くどんよりしていた。

そして、まえみはそのあと一週間ほどしてやってきた。
胸元に 十字架のネックレスとハートの指輪をして、明るく私の店にやってきた。
「形見は神社に収めました。」って。顔色も今までになくピンクがかっていた。

軽々とした足取り。まるで背中に羽がはえたかのような・・・
まえみ・・・私と誕生日が同じお譲さん。
※まえみは仮名です