19の頃

YOUTUBEでとんぼちゃんの「19の頃」を聞きました。
この歌を聴くといつも胸がぎゅっと絞られそのあと涙が出そうになるのです。
何故ならとんぼちゃんのこの詩と同じような思い出が私にもあるからなのです。

そのとき私もとんぼちゃんの歌とおんなじ19歳で、目指す大学に落ちて予備校に通っていました。
学費を出してくれる兄には申し訳なかったけど、予備校はあまり楽しくなくテストになると、確かめてもわからなくなるともう解答をあきらめてしまい、提出しなくていい問題用紙の後ろに小説や詩を書いていたりしたものです。

そして時々抜け出しては近くの図書館で読書三昧をしていたのです。その図書館の裏手には大きな公園があり、季節は初秋で、息抜きにと、その日は枯葉の舞い散る遊歩道を一人で歩いていました。

するとぽつぽつと小さな雨が右肩に落ち、傘をもっていない私が思いあぐねていたら右側からすっうと黒い傘がさしかけられたのです。ふと見上げると若い細身の男の人でした。

「濡れますよ。僕は仕事中だからこれあげますよ」って。「 えっそんな~」とふと横顔を盗み見るとさだまさしによく似たひとでした。私はそのころさださんのファンだったので警戒が少しほどけました。

その若者はそう言って走り去っていこうとしたので、「 事務所どこですか?あとでお返しに行きます」といったのは薄緑色の作業服をきていたからです。「公園の詰め所です。気にしないでいいですよ」ともう駆け出してしまったのです。

翌 日その詰め所に傘を返しに行ったらその人はいなく代わりにおばさんが、「渡しておくよ」と言ったのです。少し気落ちしたものの『私は傘を返しにきただけ よ。私は勉学の身なのよ。気にしない。きにしない。』そうしておばさんにお礼を言ってきびすを返して歩きました。なにか心残りを感じながらも。

でも少し歩いたところで誰かが私の横に並んだので、右側をみたらその人だったのです。
やつぎばやに交わされる言葉。大学生なの?OLなの?どこに住んでるの?
その頃は今ほど物騒な時代ではなかったのであまり警戒せず打ち解けた気がします。警戒しない理由はそのひとが仕事着だからということもあったかな。
その頃は携帯などなかったからきっと待ち合わせの日にちと時間と場所を決めて約束をしたのでしょうね。

それが初めて男性とお付き合いした私にとっては初めての恋の始まりでした。
初めてのデート・初めてのドライブ・始めてつないだ手・また会える嬉しさでときめく胸。楽しい時間は続きました。

でも、将来を話し合った時に、私はまだ予備校生・彼は正規雇用ではなくバイトをしながら公務員の試験勉強をしている身の上。心は惹かれてあっても時期尚早でした。出逢って半年ぐらいかな。

『今は勉強しましょう。また縁があったら逢えるでしょうって。』私が言ったのです。涙ぐんでたあの人。
その人は歯が綺麗で、いつもレモンの香りがしていました。

”あなた初めて私と会ったあの日を憶えてますか?
私19になったばかりの小雨降る午後でした。
雨に濡れてる私にそっと傘を差しかけてくれた。
あの日から私の胸にあなたが生きていました。”

二度と帰らない19の頃でした。
(記2011年11月18日)