ほや刺し

ほやを初めて食べたのは青森だ。

青森の駅前に(ノラクロ)という居酒屋があり、
まさに黒い尻尾の長い猫・ノラクロの漫画が看板に書いてあった。

そんなことをいうと年齢がばれるかなあ。でも、私は戦時中の生まれではない。

青森は店長研修の出張でいくことがあり、仕事の帰りアスパム物産から帰りに近くを通りかかった時にノラクロのかわいい看板があり足をとめたというわけだ。

明日から大勢で一週間の研修で缶詰になるから今日ぐらいはひとりで青森を堪能したかった。

一人で入るのは少し勇気がいることだが、夕方六時くらいだったので
思い切ってのれんをかきわけてみた。

すみませ~ん。やってますか?
はあいやってるよ
ひとり?
はい。ひとりです。
何飲みますか?
日本酒で
いやあうれしいねえ
つまみは何おいしいですか?
今日はほやが活きいいからほやの刺身どうっすかね
それいいですね

これが20代後半の女性が話す会話とは思えないがまさに今で言うと親父ギャルだったかもしれない。

そんな会話で始まり楽しい時間が過ぎていった。

ほやが出てきた。
海のパイナップルといわれるほや。医学的には体内の毒素をだしデトックス効果があると聞いた。ダイエット効果もあると。

山吹色した身の色ににわさびがからみあう。少し苦いじゃりっとした感触にあとから潮の香りとしょっぱさが口の中をいっぱいにする。
おいしい!飲んでいるお酒は津軽の田酒だ。これがまたよく合う。

マスターは次にもろキュウを作っている。

どんなもろ味噌ででてくるのかなと考えていたら、それからひとり二人とお客さんが
増え、あっという間に小さなお店は満杯になっていった。

そこは出張族の癒しの場所でもあるらしく一人で来ている人もいた。
それからは、3ヶ月に一度ほど先輩や同僚を連れて訪れた。

しかし、後にも先にもあんなおいしいほやを食したのはあのときが最初で最後だ。

年に一度ほど瓶詰めのほやをつまみにするけれど、あの時の青森の居酒屋には敵わない!